圧倒的な量の積み重ねが運を引き寄せる 金沢景敏さん
TBSの看板を捨て、完全フルコミッションの生命保険の世界へ。厳しい世界に身をおきながらも、第一線で活躍し続ける金沢さん。
「僕は運がいいんです」
なぜ、多くの運を引きつけられるのか——。
そこには、金沢さんが持つ考え方と行動に秘密がありました。
プロフィール
金沢 景敏(かなざわ あきとし)
京都大学工学部工学化学科卒業。東大寺学園高校では野球部に所属。早稲田大学理工学部を中退後、2か月の受験勉強を経て京都大学に入学。アメリカンフットボールをはじめ活躍。京大卒業後TBSに入社。世界陸上やオリンピック中継、格闘技中継などのディレクターをした後、編成としてスポーツを担当。 2012年よりプルデンシャル生命保険に転職し、1年目で個人保険部門全国約3200人中の1位になる。 全国の営業マンの中でトップ0.01%程度しかいないTOTに3年目で到達。
テレビ業界から保険業界へ飛び込む
僕はもともとTBSというテレビ局で働いていました。2012年にプルデンシャル生命という外資の生命保険に転職。完全フルコミッションの世界で1年目に日本一。実は保険業界のギネス記録を更新しました。今期も保険の営業マン約30万人の中で1位になりました。なぜ結果を出せたかというと、めちゃくちゃ運がいいから。運がいいのはなぜかというと、誰よりも圧倒的な量をしているからです。
金沢さんの中にある「かっこよく生きる」という美学
単純に世の中でうまくいくためには量で、母数を作ることが必要です。圧倒的な量からしか質は生まれません。面白いことにエネルギーは出せば出すほど増える。能力は使わないと増えません。スポーツ、勉強、バイト、ナンパ…何でもいい。理屈効率を抜きでアホになれる、その経験が人生トータルでプラスになります。
棚から牡丹餅をもらえる人の共通点
社会に生きる際は、母数を作ることをすごく意識した方がいい。僕は運がいいので、棚から牡丹餅をすごくもらえます。ただ、棚から牡丹餅をもらえるのは、棚に牡丹餅を置いているから。ないところからは、絶対に落ちてきません。
たとえば、100個置いて1個落ちるとしたら、300個置いたら3個落ちてくるし、1000個置いたら10個落ちてくる。ただ、落ちてきても気づかないと意味がないし、落ちてきた後に動いてしっかり結果を出すことが必要です。
それに気がついたのはナンパでした。僕らの時代は、いかにナンパをしてポケベルの番号を聞くかという時代でした。僕は中高男子校だったので、中学校3年生時に1日で喋る女性というのが、保健体育のおばちゃんとおかんぐらいしかいませんでした(笑)。「これは、やばい一生彼女ができない」と思って、友達4人とナンパしに行きました。
そこで気がつきました。10人から声をかけて1人からポケベル番号をもらえるのであれば、20人からは2人、30人だったら3人…といった具合に、母数に比例している。10人に声かけて番号をもらえる人数を1人から3人にしようとトークスキルを磨くよりも、30人に声をかけた方が早い。やっている間に確率が上がりました。
イチロー選手の美学にハッとさせられます
そういう感覚にフィットしたのは、イチローさんの言葉でした。イチローさんは、一回も打率を求めたことがないといいます。なぜなら、打率を求めると失敗するのを恐れるから。たとえば、4割打ちたいと思って最終打席が4割だったら立ちたくないでしょう。打てなかったら4割を切るから。だから、イチローさんは打率よりも安打数だという。「結局、安打数を出すには打席に立つしかない」その話を聞いたときに、自分のやっていることは間違っていないと思いました。
手放して気づいた「ありがたい」という気持ち
人は面白いことに、手放すものが大きければ大きいだけ、得るものが大きいチャンスがやってきます。握っている限り新しいものは掴めません。たとえば恋愛もそう。好きな子に振られて、そこにずっと執着していたら新しい彼女はできません。
TBSという安定した収入と大きい看板を捨てることですごく得るものがありました。それは何かというと、考え方が変わりました。TBSをやめてから、すごく大変でした。テレビ局で働いている時の僕は今から思えば、「テレビに出してあげる」「取材してあげる」といった気持ちがどこかにありました。業界の人も「あなたが金沢さんですか、聞いていますよ!若くして活躍してすごいですね」と態度を変えます。それが嬉しくて、気持ちよかった。
プライベートは3人のお子さんを持つかっこいいお父さん
そこからプルデンシャル生命、俗に言う保険の営業マンになりました。名刺を渡した時の人の反応が180度変わりました。「あぁ、また保険の営業ね」と名刺を捨てられ、電話しても出ない、メールしても返信が来ない。人に会ってくれないどころか、本人に連絡すら取れない。そういう状況になって初めて人が会ってくれることのありがたさを感じました。テレビ業界は名刺さえ出せば、誰でも会ってくれた。ただ、保険業界は誰もが売り込まれると思って距離をおく。本当に当たり前じゃない、感謝するとはこういうことだという単純なことに気がつけました。
皆さんがいま教室にいることを、当たり前に思うかもしれませんが、裏から見れば当たり前ではない人も絶対にいます。毎日、美味しいご飯を食べられない人もいる。そう考えたら、「ありがとう」と思えた瞬間に人は考え方が変わります。
弱さを認めて強くなれた
自分が弱いし、サボりたいし、楽をしたい人間だということをわかっている。わかったことによって、すごく変われました。それがわかったのは大学のアメフト部でした。京都大学のアメフト部で一生懸命やっていましたが、日本一になれませんでした。ただ、日本一を本気で目指してなかったことを自分でわかりました。どこかで「立命館には勝てない」「監督来ないから楽をしよう」「早く引退したいな」「京大アメフト部の肩書きさえあれば、この先ずっと生きていける」と思っていたのです。
実際、TBSに入ってもすごいなと言ってもらえた。ただ、自分には嘘をつけません。やりきっていないことは、自分でよくわかっている。TBSをやめるときに、そうした自分と向き合って、受け入れました。
だから、この保険の仕事では「どうなりたいの」「どうありたいの」と常に自問をしています。
「また逃げて後悔する?いや、逃げたくない」「この人に電話するのをやめる?メールしない?どっちがなりたい自分に近づくのか」「休息が必要なのか?それとも、ただ眠いのか?」
そうすると、自分が選べなかった道が選べるようになります。人間は言い訳を考える天才。険しい道を選べるようになったのは、自分が日本一から逃げたことを自分で認めたからです。いろんな意味で完璧な人間はいません。「自分って、どういう人間なんだろう?」と1日1回考えるだけで、人生変わると思います。
挫折だらけの経験
華々しい人生に思われがちですが、僕の人生は挫折だらけです。大阪生まれ育ちで、うちの親父とおかんは高卒のヤンキー。親族の中で、大学に行っているのは自分だけ。思い返すと、これも全て人のおかげなんです。
幼馴染の両親がヤクザということで同じ小学校に行くとヤクザになってしまう。幼稚園の先生が「違う小学校に行った方がいい」と親に言ってくれて、僕だけ私立に行きました。親も高卒ながらバブルで景気がよかったので、近畿大学附属に入れてもらえて、大学までエスカレーターでした。でも、また小学校の先生が中学を受験しろと助言をしてくれて、灘に補欠合格で東大寺に合格。普通だったら灘に行くところですが、補欠だったら行かないでいいし、風水的に東大寺に行けと。中高は野球部で全然勉強せずに浪人をしました。浪人時代、ひたすら遊んだらまた落ちました。成績良くても遊んでいる人は落ちる。成績悪くてもコツコツやっている人は合格する。ちゃんと神様はいるんだと思いました。
自分のことをカッコ悪いと思いながらも早稲田に入りました。楽しい学生生活でしたが、1年生の11月に実家の仕事が自己破産。理系だったので生活費にアメフト部、絶対無理という状況。早稲田を辞めて2ヶ月で京大に合格しようと本気で思いました。人生最大の決断でした。結果は、合格。人って腹を括ったらなんとかなると思いました。ただ、何とかなるのは、やることをやってないといけないと同時に思いました。
性格が前向きだから、自己破産して家に取り立てが来たのもプラスに思った。なぜなら、京大と受験を舐めていた自分にリベンジするチャンスをもらえたと思えたからです。親が自己破産をしなかったらそのまま早稲田にいたので。
京大のアメフトに入って日本一から逃げる弱い自分を突きつけられ、留年して3年遅れでTBSに入社。振り返ると、しんどいことはたくさんありましたが、全部あって今の自分があります。もし現役の時に京大に合格していたら人生を舐めていた。きっとどこかで、しっぺ返しをもらったと思います。
頑張る原動力はかっこよく生きること
小さい頃から、両親に「勉強をしろ」と言われたことはありません。「喧嘩に負けるな。でも自分から手を出すな、弱いものいじめをするな、女の子に手を出すな」と。親からは、「かっこよく生きなさい」とずっと言われてきた。それが今でも活きています。自分が一番頑張るエネルギーはかっこつけることです。
特に男の子はかっこつけたいじゃないですか。女の子にもモテたいし、かっこつけたいところが自分にはすごくある。でも、かっこつけるためには結果が必要です。お父さんが結果を出していないのに、子どもに結果を出せとは言えない。お父さんが一生懸命に頑張っていないのに、子どもに一生懸命やれとは言えない。結果が出ていない自分を想像するだけで身の毛がよだつ。だから、やる。そういった、自分の弱さとすごく向き合っています。
1日86,400円をどう使いますか?
皆さんの時間は絶対貯金できません。見た目も能力も違う中で、唯一全員に与えられるのが時間。どんな人だって24時間だけは平等です。それをどう使うかで、人生は変わります。
たとえば、24時間は86400秒。これは例えるなら、毎日自分の口座に86,400円が振り込まれるとしましょう。それを使おうが使わまいが、23時59分59秒には必ずなくなる。そう言われたら、使いたくなりますよね。それを自分の欲望を満たすためだけに使うのか、自分を高めるために使うのか、誰と使うのか、何に使うのかで人生は変わります。この1日をどう使うかの積み重ねで人生が変わるのです。
紙っぺらだって、積み重ねて一年経ったら分厚くなります。本当に細かいことなんです。そういう意味では、学生時代は二度と来ない時間。何時に起きてもいいし、勉強してもしなくてもいいし、何をしてもいい。全て自分の意思です。時間をどう使うかで人生トータルで変わります。振り返ると学生時代は後悔があるし、その後悔をすることもいいと思います。そういった意識をして過ごせば絶対に変わるので、ぜひ大事な時間を過ごしてください。
もがき苦しんだ経験が大きな器を作る
いま思い返すと、大学時代のアメフトの監督は教育者でとても厳しい方でした。練習で相当メンタル的に追い込まれていましたが、「お前を絶対に甘やかさない」と言われました。「男は30歳までに器の大きさが決まる。30歳を超えて『いざ勝負』というときに自分のやりたいことだけ、楽なことだけして来た人は、器が小さくてその中でしかやれない。今もがき苦しんでいることは、全てお前の器を作っている。死ぬほどしんどい思いをしろ」と教わりました。
力強い言葉が背中を押してくれます
学生時代にもがき苦しん経験、TBSに入ってぼろ雑巾のようにADとして働いた経験、いろんなしんどいこともありましたが、全部器を作っている。なぜ周りの人より結果を出せるかというと、頑張れる器が大きいだけなんです。頑張った経験が50歳、60歳になってプラスになるかもしれない。それが活きるのがいつかはわかりませんが、必ず、自身の力になります。
物の見方、捉え方次第で人生は変わる
これから絶対嫌なことにぶち当たります。でも、それは自分次第で絶対プラスに変えられます。何事も考え方次第です。
大学で入院中に振られる悲劇がありました。いま思い返しても胸が痛い時もありますが、その時も思ったのが「絶対に見返させてやろう」ということ。次のシーズンで大活躍して、振ったことを後悔させてやろうと思いました。こうした怒りや悔しさの感情を他人に向けると刃になりますが、自分に向けるとエネルギーになるのです。
ちょっとして捉え方次第でエネルギーに変わります。そうしないと人生もったいない。一人ひとり能力に差はありますが、可能性は無限大。その自分の可能性を信じられるかで人生は変わります。高校や大学、社会人最初の頃は、何がやりたいとかありませんでした。ただ、一生懸命やって来たのがよかった。
いま色々と言っていることが、わからなくてもいい。ただ、これから10年後、20年後に「そういえばあんなことを言っていたな」と思い返してもらえたらと思います。
まずは自分を幸せにしよう
たとえば、僕がポックリ死んだら家族は悲しむと思いますが、社会は変わりません。人はちっぽけな存在だから、自分のやりたいことをやればイイ。ただ、それが誰かをだましたり、傷つけたりすることではだめ。また、自分が思っているほど、他人は自分のことを何とも思っていません。所詮お互い他人事なので、周りの声を気にして自分のやりたいことをやれないのはもったいないと思います。
人生において、一番不幸せなことは人に決められること。自分で決めたことは言い訳をしません。ただ、人に決められた人生を送っている人が多い。自分の人生なんだから、自分で決めて自分が幸せになればいい。まずは自分が幸せになること。自分のために頑張れないと他の人のために頑張れないし、自分を満たさないと自分を満たせないし、自分を大切にしないと周りを大切にできません。
ただ、自分だけ良ければイイとは違う。僕は自分が幸せになることによって、家族が幸せになると思っています。自分がやりたいことをみんなで楽しんでやるんです。
皆さんもせっかくの学生生活、自分の人生を豊かにするために日々行動してもらえたらと思います。本日はありがとうございました。
お話を終えて
自分の心奥底にある熱い想いがこみ上げてくるお話でした。
プラスの感情も負の感情も全て自分の力に変える金沢さんの姿勢はとても学びになりました。小さな捉え方の違いが、大きな成果になると実感。
圧倒的な量をこなしているからこそ点と点がつながって線となり、結果的に運がついてくる。「最近、ついてない」と思った際は、一度立ち止まって自身の言動を振り返ると気づきが得られるかもしれません。
勝つために必要なのは戦略だ 小比類巻貴之さん
かつて日本で大きな注目を集めたK-1 WORLDMAX。この舞台を盛り上げたのが、小比類巻選手と魔裟斗選手の2人と言っても過言では無い。
今までに4度の日本チャンピオンに輝いた小比類巻選手は、どのようにして「勝ち」へ向かったのか――。戦いに挑むまでの思考、何度も挑み続けるその姿勢は、「勝ちたい」と思っている誰にでも勇気と希望を与えてくれる。
勝利を目指す人の背中を押してくれる内容です。
プロフィール
小比類巻 貴之(こひるいまき たかゆき)
格闘家。小比類巻道場(東京恵比寿、青森三沢)代表。元格闘技イベント『Krush』解説者。K-1 WORLD MAX日本代表トーナメントにて史上最多の三度優勝、「ミスターストイック」と呼ばれる。現在はプロ選手育成、一般への指導の他、解説業、企業講演などを行う。著書に『あきらめない、迷わない、逃げない。』(サンマーク出版)
格闘技との出会い
中学校1年生の時に強くなりたいと思いました。きっかけは中学生の時にした腕相撲。当時の僕は、背も高くて足も早かった。だから、勉強は負けるかもしれないけど運動は絶対に負けないという自信がずっとありました。ただそんなある時、友達と腕相撲をしたら負けてしまった。運動抜群だったのに、なんで負けたのだろう。「イェーイ、小比類巻に勝ったぜ」というのがすごい屈辱でした。
どうやったら腕相撲で勝てるかを調べたら腕立て伏せが効果的と知り、家に帰ったら何回やったのかというくらい毎日腕立て伏せに励みました。その後、腕相撲をしたら勝てるようになっていき、クラスで一番強くなりました。ただ、本当の強さってこれではないと思い、もっと強くなるにはどうしたらいいのかを考えました。
その当時、パソコンがないので本屋さんで格闘技雑誌を見つけました。そこにはたくさんの格闘技が載っていて、「こんなにも強くなる方法があるのか!」と。出会った時に震えが止まりませんでした。そこから、どんどん格闘技の世界にハマり好きになって「いずれここに載っている人と戦おう」と思いました。
ただ、週3回通っていたのは田舎の道場。練習相手は先生ともう一人のたった二人だったので、独学で毎日練習しました。18歳でプロの格闘家になろうとキックボクサーのプロテストを受けましたが、顔面パンチをくらってしまい不合格。「プロは無理だな」と思って一度は地元に戻りましたが、距離感の大切さを思い出してもう一度挑戦したところ合格。1年目の19歳で日本チャンピオンを倒し、やっていったらトントン拍子でこの世界にいました。
K-1全盛期の時代を駆け抜ける
僕がやっていた頃のK-1は今と経営が違っていて、毎年年末に放送されるくらいすごいブーム。僕も試合をすると日本中の4人に1人がテレビを見ている状況でした。試合後に無傷だということで買い物に行くと、声をかけられたり追いかられたり、そんな人気がありました。今は誰も声をかけてくれませんが(笑)。K-1が大ブレイク、そんな時代に戦っていたのです。
リングの上で戦うときは条件が一緒です。トランクス一丁でグローブをはめて体重も一緒。約50日間で15キロの減量をして試合に出ました。とにかく同じ条件でないといけません。格闘技界では体重が5キロ違うともう雲泥の差で、重い方が圧倒的に有利なのです。
須藤元気選手との試合は大番狂わせだったという。予想をしていなかった裏拳をくらいダウンをもらったものの、絶対的に自信のあるローキックを貫き通して勝利を掴んだ
きっと会社の経営となると条件が違うでしょう。会社の場所、歴史、人材の質、そういった条件が違う中でどのように戦略を立てていくかを考えると思いますが、格闘技は全く同じ条件で戦うのです。では腕力やスピードなど、結局、能力が優れている人が勝つのか?というとそういう訳ではありません。よく大番狂わせという言葉がありますが、格闘技ではよくある話。これはつまり戦略なのです。
戦略があってこその格闘技
だいたい試合の50日前に対戦相手が知らされます。例えば「オランダのアルバート・クラウス選手です」と。僕は身長181cmで彼は175 cmだから、距離感は僕の方が取れるから中に入らせないようにしよう。筋肉は彼の方があってパワーでは劣っている。スピードは僕の方が優っている—。こういう風に相手が決まったら、1~2日かけて相手の映像を見て徹底的に分析をしていきます。基本的にはパワー、スピード、リズムがポイントとなります。
格闘技にとって大切なのは、軸と重心。
軸とは人にとってセンターのこと。構えた位置で、頭のてっぺんからお尻まで真っ直ぐになっているか。それが崩れる人は絶対に弱い。一方で、軸がしっかりしている人は、どんなことがあっても崩れないので打ち返すことができます。
あとは重心。ヘソの下の丹田に重心が乗っているか。そうするとしっかりと地面を使えるようになる。たとえば、肩に力が入っていると重心は浮き、軽いパンチになってしまいます。これが地面に置くことで、地面を使えるようになって強いパンチを繰り出すことができます。
ミスターストイックと呼ばれた現役時代のしんどさをさらけ出しています
そして、対戦相手と戦うために大切になるのが距離間と呼吸です。
僕は当てることができるけど、相手は当てることができない。この距離感を忘れてしまうと相手のペースになってしまいます。
呼吸とはリズム。相手が早いリズムで来られるとしてのペースに持っていかれてしまう。早いリズムなら自分も上げておいて、イーブンからの試合運び。相手のリズムが遅い場合は、自身のペースをあげてみる。
相手の距離感を読みながら、相手のリズム感を読む。そして、軸がしっかりしていて崩れない重心があれば、身につけた技が使えるようになってくる。そうして、戦略を立てていきます。
リング上の戦いにおいて、戦略の重要度は何パーセントか。僕からすれば、80~100%戦略が一番大事だと思います。格闘技をテレビで見ると、喧嘩が強い人や気持ちが強い人が勝つのではと思いがち。ただ、対戦相手を知り尽くして、いかに準備をするのかが重要です。準備することが戦略なので、80~100%勝敗が決まると思っています。
魔裟斗選手との試合で学んだ最大の敵
僕は3回、魔裟斗選手と戦いました。
1回目は僕がひざをお腹に入れて、ダウンを3回とってKO勝ちしました。
2回目は異様な雰囲気の試合でした。決勝戦なので通常は「わーっ」と大きな歓声が上がるにも関わらず、シーンとなっていた。ミットを打ち合う音しか聞こえないのです。何なのだろうと思ってこちらもテンションが落ちてしまい、「来たら返す、来たら返す」とやらされている感じでした。その試合は手数の差で、負けて準優勝に終わりました。
そして3回目の試合。一勝一敗同士で三度目の正直ということで、K-1 WORLD MAXの中では一番高い視聴率でした。結果から話すとダウン1回取られて負けてしまいました。
1、2ラウンド目の調子は良くて戦略もバッチリでした。ただ、3回目にあまりに楽勝と思い、「もっと追い詰めて、ダウンを1つでも取れば完全勝利。これで過去が全て消える」。僕の中に驕りが出てしまい、大事な間合いを詰めてしまった。そしたら、相手が「あれ、小比類巻の得意なキックがなくなった」と思ったのでしょうね。いきなりお腹にパンチ・膝蹴りが入って「うっ」となり、鼻にパンチが当たりダウン。トレーナーと何日間もかけて作り上げた戦略を僕が無視してしまったのです。ダウンを取られて残りの時間は1分もなかった。それで、魔裟斗選手との戦いは終りました。
魔裟斗選手との最後の戦い。強さと強さのぶつかり合いに目が離せません
試合後「もう喧嘩をするのはやめよう』と魔裟斗選手から一言もらいました。これって勝ったから言える言葉ですよね(笑)。ただ、横浜スーパーアリーナ超満員の暖かい声援。春の桜が散ったような雰囲気で、声をかけられて、「そうだな」と返事をして肩を抱き合ったのを覚えています。
50日前に試合が決まった時に油断をしていけないと思っていました。ただ心のどこかで「50日の中で戦略を完璧に作り上げた」という驕りがあったのです。だから、常に緊張感と「もし、◯◯があったら」という考えが必要だと感じています。いけると思っても、やはり最後まで油断をしないことが大切です。
ゾーンに入るとは
初めて戦う人やデビュー戦の人は、自分の心と対話をしている。「まだ、スタミナ大丈夫だな」「パンチが当たった」「キックダメだったな」と。
レベルが上がると、対戦相手の気持ちが読めるようになります。たとえば、パンチが当たったと思ったら「相手が嫌がったな」「相手がブロックした、何を嫌がっているのだろう。次は他の攻め方をしてみようか」と相手の心を読むようになります。20~30戦くらいを重ねると相手の気持ちが読み取れるようになります。
そして達人級、50戦くらいになると、試合のスポットライトから試合を眺めている。言い換えれば、ストリートファイターを操作しているような感覚です。「距離感が悪いから押し返そう」『相手のダメージは結構溜まっているからもう少しだな」とわかってくる。
戦う中で焦ってしまうと、自分との会話になってしまいます。セコンドの人の役目は、それに対して「お前、大丈夫だよ。気にするな。お前の目的は足一本だ」と声をかけて、本来の自分を取り戻してあげるのです。達人級は、自分で言われなくてもわかっているから「やることって◯◯ですよね」とセコンドの伝えたいことと一致します。
現在参議委員であるアントニオ猪木さんは、一世を風靡した元プロレスラー
さらに上回る人がいる。例えば、アントニオ猪木さんは「東京ドームの一番上の人に座っている観客。米粒のような見えない人に伝えろ」と言っていました。戦っていながら、「俺の戦いで伝えたいのはこういうことだ」というのを訴えろというのです。そうすると、東京ドーム会場全体が「この人かっこいい!」「この人の試合を見にいくと元気になれる!」「明日からまた頑張ろう!」という空気に包まれる。そう思ってもらえるのがプロなのです。
だから僕は、全国テレビで生放送をされたら日本を全部見ないといけない気持ちになりました。「北海道の全く知らないところの人にも伝えないといけない」。そういう気持ちになると、鼻が折れた、肩が脱臼したくらいで倒れていられませんでした。
目標をブラさずに到達するには
現在は現役を引退して選手を育てています。当然ながら選手一人ひとり性格、出身地、好きなものも違う。ただ、彼らが決まって言う言葉が「チャンピオンになりたい」。チャンピオンになったら、「お金はもらえるし、有名になれるし、女性にもモテる」と。
ただ、少し強くなると女性にモテ始めるのですよね。ちょっと頑張ったら、思ったよりも強くなる。そうなると、周りからいろんな情報が入るようになります。たとえば、「この間の試合頑張ったからご飯に行こうよ」と軽い言葉に乗っかる。食事後は、女の子に会いに行って——。目標を目指している過程で間違いなくいろんなものが邪魔してきます。これらを絶対に排除しなければいけません。
余計な情報を入れないようにすると、目指していた情報がたくさん入ってくるのです。
またチャンピオンを目指していたら、「いかに愛せるか」が大切だと思っています。いかに愛して、たくさん時間をかけて考えて、チャンピオンになるための情報をたくさん入れれば、逆に迎えに来てくれると思う。
格闘技以外の例をあげると、男性が好きな女性のために行動していれば、振り返ってくれるかもしれない。その愛情を返してくれるかもしれない。
もう一つ信じているのが勝利の女神。「ジェントルマンになることだ」と選手たちにいつも言っています。たとえば、「椅子を譲ってほしい人がいたから譲った」「チケット買うのに悩んでいる方がいたから教えてあげた」「目の見えない方がいたから誘導した」とかそんなちっぽけなことでいい。あるいは、「練習前に誰も掃除しないところを掃除する」や「毎回、使ったグローブは感謝を込めて磨く」など。これら選手の行動は必ず勝利の女神が見ていると思っています。
チャンピオンになりたいというのは、自分自身の単なるわがまま。わがままを叶えたいと言ったら、周りの力、格闘技の神様の力も必要。格闘技の神様は「この人がふさわしい」とチャンピオンを選ぶと信じています。
最後の最後3分3ラウンド勝負がつかず、延長戦になるギリギリの試合。最後の最後に勝たしてくれるのは、勝利の女神をいかに振り向かせているか。だから選手には「かっこ悪く生きるなよ。勝利の女神は女性だぞ。ダサい男には絶対に振り向かないから、かっこよくしておけ」と伝えています。常にかっこよく男らしく、そして人を助ける力を持っている人になれば、勝利の女神が振り返ってくれると思います。
皆さんも、とにかく「これだ!」と思ったものを信じて愛してやってください。
できる人の共通点
今後、皆さんが仕事をしていく上で経営をすることに関わることがあったらどんなことに期待をするかをお伝えして終わりにしたいと思います。
僕はいま、東京恵比寿のジムにてプライベートレッスンで教えています。僕が担当しているのは20人で全員経営者。経営者の方がやっていること、それは全て「準備」だと学びました。
優れている人は100%の自信を持って自分を作っている。たとえば、どこかで契約した時に、何を質問されていてもすぐに返せる。「大丈夫ですよ」という安心感があるのです。
もう一つは、人の接し方が違います。中にはイケイケのタイプの方もいますが、人をしっかり理解していて一緒にいて居心地がいい。
今日は僕が今までやってきたことと、ジムをやらせてもらって経営をしていくうえで経営者の方々から勉強をさせてもらい感じていることをお伝えしました。今後みなさんにも、素晴らしい経営の素質と人間性を持ってこれから挑んでいってほしいです。ありがとうございました。
お話を終えて
お話を聞く前は、「格闘家って別世界なのでは」と思うところもありました。しかし実際にお話を聞いてみると、どんな人でも通ずる「日頃の徳の積み重ね」や「事前準備の習慣」などを教わりました。
才能だけではなく、日々の努力があるからこそ勝ち続けられる。小比類巻さんの勝利の秘訣を垣間見ることができました。
格闘家のように、どんな時も浮足立たず地に足をつけてドッシリと構える。そんな姿勢を思い出していきたいものです。
日本で一番予約がとれない焼肉店の秘密とは 森田隼人さん
「焼肉屋をイメージしてください」と言われて、どんなお店を想像するでしょうか。ゆったりと椅子に座ってお肉を囲む、そんな景色を思い浮かべた方が多いのでは。
今回、紹介する森田隼人さんが立ち上げた焼肉店「六花界」は「激セマ」と言われるほどの空間。その狭さはたったの2.2坪、そして特徴的なのが立飲み焼肉店であること。
どのようにして、この狭いお店を成功に導いたのか。
森田さんの思考に迫ります。
プロフィール
森田 隼人(もりた はやと)
1978年生大阪府生まれ。
大学卒業後、建築会社を経て25歳で独立。デザイン事務所「m-crome」を設立。その後公務員を経て、2009年に東京・神田のガード下に「六花界」をオープン。
多くのメディアに取り上げられ「肉と日本酒」の文化を構築する。
その後、2012年に「初花一家」2013年に「吟花」2015年に「五色桜」2016年に「CROSSOM MORITA」2018年に「トライリウム」など計7店舗をオープン。
日本酒の活動での功績が認められて、「第12代酒サムライ」にも叙任され、日本に限らず世界各地で肉と日本酒の普及活動も行なっている。また、シェフだけではなくプロボクサーやモデルの一面も。
国家資格である一級建築士なども持つ異例のシェフ。
芸能界との繋がりも深く、各メディアから注目を受けている。
なぜ六花界を作ったのか
「僕はいまシェフという仕事をしていて、『肉×日本酒』のお店を経営しています。
文化を辿ればわかりますが、日本ではもともと牛を食べませんでした。60年前はまだ、日本に焼肉がなかったので、肉に合わせる日本酒はなかったのです。1200年の歴史のある日本酒は、魚介や山菜と合わせて食べていました。『肉×日本酒』そういったお店は今まで世界になかったので、僕たちが新しい形をつくりました。
僕の一番の仕事は何かと言うと一級建築士。国家資格を4つに加えて、それに付随する資格はいくつも持っています。これら資格は全て26歳までにとりました。今は設計事務所とリサイクルの仕事、そして飲食店7店舗経営しています。付け加えると、プロボクサーやユニクロのモデルもしています。色々と詰め込んでおくと人間は、まず拒絶反応を起こす。そんな経験は慣れているので、皆さんの反応は気にしません(笑)。
25歳で建築士として独立しましたが、何も仕事がないところからのスタートでした。 それから徐々にインテリアデザイナーとしての仕事を得ていましたが、不景気に伴い仕事もお金もなくなりました。そんな時、宮田ジム・スポーツクラブの宮田博行会長が迎えてくれました。
夕食でファミリーレストランに連れて行ってくれると、食べきれないくらいの大量の注文をし、残った分は持ち帰らせてもらいました。わざと大量の注文をし、朝食と夕食も賄えるようにしてくれたのです。毎日、飯を食えるようになるまでずっとそれを続けてくれました。
立ち飲み焼肉店「六花界」の雰囲気が伝わってきます
『会長に恩返しをしないといけない』。そう思いなけなしのお金で作ったのが、六花界という焼肉屋だったのです。ボクサーが相手を倒そうと思ったら、野菜や魚ではなく「肉を食べよう!」と思うでしょう。ただ、ボクサーにはお金がないから価格を安く抑えられる、立ち食いの焼き肉店を作りました。
四畳半の大きさで、そこに厨房もトイレもあります。簡単に言うと乗用車1台に20人以上が入る、そんな店を作りました。周りからは『そんなの売れるわけがない』『焼肉は座って食べたい』と。ただ、そんなことはわかっている。ターゲット考えてみて、一人が美味しい、楽しいと言ってくれたらマーケティング的には勝ちなんです」
日々大切にしている習慣
「普段大切にしていることは、大きく3つあります。
まず1つは体を鍛えること。海外の方々は日本人に比べて、自分のビジュアルを大切にしています。例をあげると隣の韓国では、 男性はとても鍛えていて女性は整形をしています。それがいいとは言いません。ただ、『人は見た目が九割』という本が売れるくらいだから、ビジュアルがいいに越したことはありません。
2つ目は、日記をつけることで20年以上続けています。『日記をつけろ』とは言いません。ただ一週間一ヶ月と続けてみると、色々とわかることがあります。日記の際に毎日点数をつけて、一ヶ月ごとに折れ線グラフにしています。すると、人生の波がわかるようになって『一か月後はこうなりそうだな』『ここら辺でテンションが下がりそうだな』と予測できるようになります。
仮に10年続けたとして『今日はご飯食べた』『しっかり寝れた』そういった日記を見返して、『自分には表現力全然ないな』と気づくだけでもいい。『自分にはこんな能力があるんだな』『こんな能力が足りないんだな』と知ることが、自分自身をマーケティングする上で大切になります。
3つ目は自分への投資。先日フランスから帰ってきた21歳の子と話しました。彼は食べるのが好きすぎて、一食に5万円をかけています。自分も当時、食事にかけられる金額は3000円ぐらいだったから、食にそんなに興味を持つ必要はありません。ただ、もし食事に興味を持っていたら、どんどんお金を使うべき。食べないとわからないことがたくさんあります。
結局人は、話を聞いているだけでは他人事に終わってしまいます。自分事にするのはとても大切なので自分に投資をしましょう。自分に投資をしていると、何にお金を払うべきかが次第に見えてくるのです」
ニーズを作ること
「飲食店で立ち食いにはニーズがありませんでした。ニーズが無いなら作ることが大切。
例えば、女性でフェラーリはあんまり興味を持たないでしょう。一方男性はシャネルに対して興味をあまり持たないでしょう。この間を埋める作業が経営なんです。
lifemagazine.yahoo.co.jp六花界グループの頂点に君臨する「クロッサムモリタ」の仕掛けの多さに驚くこと間違いなし
例えば、男性に対して『シャネルが出しているビールを飲みたいか』と言われると、『ちょっと美味しいんじゃないかな』と興味を持つのではないでしょうか。そういう風に、間を埋めて自分事に置き換えていくことが経営ですごく大切なことなんです」
仕事と経営の違い
「経営というのは、立案して構築して発展させていって拡張させて目標を到達して発散させていく。最終的に、多くの人に広げていくのです。経営というのは言われたことをやらないことなんです。それに対して仕事というのは言われたことをやることです。
「なぜ大学に行くのか」を聞かれたら、仕事ができる人間になるため。僕は建築関係だったから、たくさん建築のことについて学びました。ただそれは結局、言われたことをやれるようになるためだったのです。
大繁盛の秘密教えます! 激セマ立ち飲み焼肉店「六花界」だけに人が集まる理由 (角川フォレスタ)
- 作者: 森田隼人
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森田さんの辿ってきた軌跡が綴られた一冊。多くの人に価値を届け続ける経営者の視点が勉強になりました
みんなが考えてこなかったマインドとロジックを使って、構築し、人の概念をずらしていくこと。つまり言われたことをやっている仕事自体を少し崩していくことが経営なのです。
そして経営者は『人の可能性を広げた人』と言い換えることができます。だから優れた経営者というのは、何かを作った人ではありません。例えばトヨタ。彼らは自動車を作ったのではありません。自動車を作ることによって人の可能性を広げたのです」
世界最小の経営
「世界最小の経営は何か。それは自分自身です。自分自身がやりたいことをするためには、どうすればいいのかをまず考える必要があります。
その経営を一番最初に変えるきっかけが言葉だと思います。人にものを伝えるというのは、すごく大切。
例えばコピーライティング。『そうだ京都、行こう。』でどれだけの人が京都へ行こうと思っただろうか。言葉ひとつでインパクトを作り出して、みんなの行動を群衆に集めることができるのです。
引用:年代から見る|「そうだ 京都、行こう。」ポスターギャラリー|そうだ 京都、行こう。
今は女性一人で牛丼家に入る人を見かけるのではないでしょうか。ただ、少し前まではそんなことはありませんでした。それはなぜかと言うと、『おひとりさま』という言葉ができたから。『おひとりさま』という言葉ができて『いいんだ、一人で行っても』と考えるようになったのです。あるいは『プレミアムフライデー』という言葉によって、『なんだかよくわからないけど、金曜日が楽しそう』と考えるようになりました。
先ほど伝えたビジュアルを良くするということは『いい店を構えること』と考えてください。汚い店ではなく綺麗な店に入ろうと思わないでしょう。そして、そのお店から出てくる料理というのが『言葉』なんです」
言葉をつくる3つのポイント
「言葉を作る時に、人を惹きつけることは3つあります。テクノロジー、エデュケーション、エクスペリエンスです。
みんなiPhoneやiPadなど新しいテクノロジーに興味があるんです。調べると世間がどういうことに興味があるのかわかってくるので、まず調べることから始めましょう。
エデュケーションは日本人が一番得意なことです。「あんなこともあるんだ」「こんなこともあるんだ」と、とにかく知識を貯めて覚えることがとても大切です。
エクスペリエンスとは経験のこと。人はいろんなことを経験したいと思うので、自分の経験した話を人に話すことが大事です。
多くの人から愛され続ける秘訣はどんなところにあるのか
ただ最近思うのは、2つめのエディケーションだけでは眠くなってしまう。だから、エデュケーションにエンターテイメントを足した『エデュテイメント』をしようと考えています。
テクノロジー、エデュテイメント、エクスペリエンス。この3つを考えて言葉にすると、相手にとって嬉しい話になるのです。
例えば牛を一つとっても、何ヶ月で出産されて、何ヶ月で屠畜されるか知らないでしょう。色んなことを分解してみると、知らなくて面白いことがたくさんある。それを知っておくと技術になることがあるのです。まずは知識を入れてそれらを面白いストーリーにのせて言葉にすると、人は話を聞いてくれます。知識が自分にとって役立つかを想像させることが大事なのです」
商売を通して大切にしていること
「商売をしていること全部において言えることは、仲間を大切にしていること。
サービスは不特定多数にできないと思っています。特定少数にこそできると思っているのです。美味しいものを作って『はい、食べてください』というのは、ある意味強制的だと思う。
ただ、僕が経営するお店は必ず知っている人が来店するから、『5年前に何を食べたか』や『好き嫌い』まで全部データベースとして頭の中に残っている。この人が喜ぶことを提供すること。それこそ、サービスだと思っています」
焼肉店を通して届けたいもの
「焼肉店を通して届けたい価値は命です。
牛が生まれるまでの日数は300日、一方の人間は十月十日(とつきとおか)。人間と牛の出産は10日しか違うのです。牛をどうして食べてなかったかというと、ずっと一緒に生きてきたから。今で言うと、犬を食べるのと一緒だったのです。
全ての食べ物には設計図が残されています。米はもともとあんな形ではなかっただろうし、トウモロコシももっと小さかったはず。1000年前に震災や災害がたくさん起こって、人間が子供たちに美味しいものを食べさせてあげたい、その形を残しているのが食材の設計図。その設計図をどういう形で僕たちが調理するのか。それがとても大切なことだと思っています。
森田さんが語る「シェフの設計図」とはいかに
もともと牛は1という量の乳を作っていましたが、この30年で品種改良されていまは2.5倍の乳が出るようになっている。その品種改良は人間が残した設計図ですが、図面は残せません。だから形として残したものが食材だと思うのです。
焼肉に関してもそうですが、色々なものには部位がある。どうしてあの形になっているのか、と。そういったことをしっかり伝えるのが大切だと思っています」
お話を終えて
お話を聞いた後日、立ち飲み焼肉屋「六花界」を訪れることができました。想像以上の狭さに驚かされたことを覚えています。ただ、この狭さが人と人の距離をぐっと引き寄せ「この場所にまた来たい」と心から思えるのでしょう。「六花界」がオープンしてから8年、多くの人に長く愛され続ける理由を体感することができました。
インターネットが流行し、気軽にコミュニケーションが取れるようになった昨今。リアルな場だからこそ得られる、温かさがここにはあります。
気になった方は、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
落語家とバラエティプロデューサーが語る、運と落語 立川談慶師匠×角田陽一郎さん
「この前、パンケーキ屋に行って来たんだけど、これがビックリするくらい美味しいの!生クリームと抹茶のハーモニーがたまらないの!本当におすすめ!」
「ふーん、そうなんだ」(後日忘れて、何もアクションはない)
…
この「ふーん」という言葉をよく使っている人は要注意。
なぜなら、「ふーん」は「不運」を引き寄せてしまうから——。
本日は、立川談慶師匠と角田陽一郎さんの考える「運」の高め方を紹介します。
【目次】
プロフィール
立川談慶(タテカワ ダンケイ)
1988年慶応義塾大学経済学部を卒業後、㈱ワコールに入社。
セールスマンとしての傍ら、福岡吉本一期生として活動。
平成3(1991)年4月立川談志門下へ入門。前座名立川ワコール。
平成12(2000)年12月、二つ目昇進、談志より「談慶」と命名。
平成17(2005)年4月、真打ち昇進。
平成22(2009)年から二年間、佐久市総合文化施設コスモホール館長に就任。
平成25(2013)年、「大事なことはすべて立川談志(ししょう)に教わった」(KKベストセラーズ)出版、以来、「落語力」「いつも同じお題なのになぜ落語家の話は面白いのか」「めんどうくさい人の接し方、かわし方」「落語家直伝うまい!授業のつくり方」「なぜ与太郎は頭のいい人よりうまくいくのか」「人生を味わう古典落語の名文句」など「落語とビジネス」にちなんだ書籍の執筆。
NHK総合「民謡魂」BS日テレ「鉄道唱歌の旅」テレ朝系「Qさま!」CX系「アウトデラックス」「テレビ寺子屋」などテレビ出演も多数。
角田 陽一郎(かくた・よういちろう)
バラエティプロデューサー
1970年千葉県生まれ。東京大学文学部西洋史学科卒業後、1994年にTBSテレビに入社。TVプロデューサー、ディレクターとして「さんまのスーパーからくりTV」「中居正広の金曜日のスマたちへ」「EXILE魂」など、主にバラエティ番組の企画制作をしながら、2009年ネット動画配信会社goomoを設立(取締役〜2013年)。
映画『げんげ』監督、音楽フェスティバル開催、アプリ制作、舞台演出、「ACC CMフェスティバル」インタラクティブ部門審査員(2014,15年)その他多種多様なメディアビジネスをプロデュース。
いとうせいこうとユースケ・サンタマリアがMCを務めるオトナのためのインディペンデンス型トーク番組「オトナの!」を制作(2012年1月〜2016年6月)。「OTO-NANO FES! オトナの!フェス」を開催。
2016年12月31日付でTBS退社。
2017年1月より「オトナに!」(TOKYO MX)、「イク天 イク天〜イクぜ、バンド天国」(BS-TBS)などプロデュース。
2017年7月より、「占いTV」総合プロデューサー(〜2018年6月)
2018年2月より、株式会社テクサ社外取締役就任。
6月より、オンラインサロン『サッカソン』
7月22日ミュージシャンmeiyo(メイヨー)プロデュース開始
「落語家とバラエティプロデューサーが語る、運と落語」に参加した学びを共有します。
「最近なんだかついていないな…」
そんな悩みを抱えているあなたに必見の情報が満載です。
神社のお参りではお願いをするな
みなさんは神社のお参りに行った際、どうしていますか。
「二礼二拍手一礼。さぁ神様、私の願いを叶えておくれ」となっていませんか。
角田さん曰く、「神様にお願いしてはいけない」。
「皆さんは、お参りに行ってお願いしてはダメなのを知ってますか?
神様にはお願いをするのではなくプレゼンをするのです。
『もし、100万円をくれたら世のため人のため、自分のためにこんな素敵なことができます!』と。
『そのプレゼンがよければ100万円をやるよ』というのが神様なんです」
祈祷の時間が40分ほどある中で、黙るのではなく小声で口に出すことがポイント。
なぜなら、言霊があるから。
アドバイスの最後に、こんな言葉を投げかけます。
「ここまで言った挙句、あなたは九頭竜神社に行きますか?
ここまで聞いて本当に行く人は、結局なんでもやるんです」
他力本願の人は、結局チャンスを逃す。
行動するからこそ、運が巡ってくるのです。
パワーのつまった九頭竜神社が、みなさんの参拝を待っています。
今すぐスケジュール帳のチェックを。
星座をつなぐ
全然関係ない人同士がたまたまつながり、最終的に面白い企画になることが多いという角田さん。
親交のある水道橋博士も同じ現象が起こるそうです。
「たとえば、獅子座という星座がありますが、あれは地球から見たらたまたま獅子の形に見えているということ。
当然、地球からの星と星の距離は違うわけです。
このように全然関係ない人同士が偶然関係ができることを『星座がつながる』と言っています。
一年前、たまたま僕が話した内容と、博士、そしてコトブキツカサの3人考えていたことが、全く同じことがありました。
あまりに星座が完璧につながったので博士に聞いたんですよ。
『僕も博士もつながることが多いじゃないですか。それには何か理由があるのでしょうか?』
すると博士は、こう答えました。
『だって、俺も角田もいろんなところに顔を出しているから。
あらゆる星が周りにあるんだもん。
そりゃ、どこかに行くだけで自動的につながるよ』
みんな『出会いを大事に』と言うが、まるで何も星がないところに探してる。
むしろ星は周りに死ぬほどあるんです。
それに何となくアクセスするのを10年も続ければ『あー、これは5年前の星だ』とつながってきます』
ここでの大事なことは、出会いを「狙っていない」ということ。
運を呼び込まない人は、「どうすれば売れるのか」「あのマネージャーなら聞いてくれるんじゃないか」という感情が入り混じる。
談慶師匠曰く、「今の世の中は目先のことにとらわれているため、このような行動に走ってしまう」と語ります。
スティーブ・ジョブズも「点と点をつなげる」重要性を、かの有名なスピーチで語っています。
スティーブ・ジョブス スタンフォード大学卒業式辞 日本語字幕版
気づかぬうちに、周りでは「つながり」ができているかもしれません。
アンテナを張りめぐらせ、受け取る力も欠かせないのではないでしょうか。
一言多いと二言多いの違い
幼少期から口が達者であった角田さんは、父から「二言多ければ、落語家になれるのに」と言われていました。
大人になっても一言多いと二言多いの違いがわからなかったものの、さんまさんと仕事をしてある気づきを得たというのです。
「『恋のから騒ぎ』という番組がありましたよね。
そこで、さんまさんは女の子のことを、イジるじゃないですか。
『お前ほんと男にだらしいな』と。
一言はそこで終わるのですが、さんまさんは二言目を足すんです。
『お前ほんと男にだらしいな、そんなに可愛いのに』
『そんなに可愛いのに』
それがあるだけで全部褒め言葉になる。
『二言多いとは、これだ!』と、さんまさんから学びました」
「そう考えると、一言多いツッコミは簡単。
仮に真実だとしても、ある作品や人を腐すことは誰でもできる。
ただ、鋭いツッコミをしていることが、知性の現れだと勘違いをしている。
それをどう気持ちよくさせるかが、本当の知性で、それが運につながると思っています」
言葉はナイフのように便利で欠かせないものですが、使い方によっては相手の心を傷つけてしまうこともあります。
どんな言葉を投げかけられたら嬉しいだろうか。
まず、自分へ問いかけることがスタートではないでしょうか。
運を上げるには名乗り上げる
誰でも運を開くヒントがあると角田さんは言います。
それは、「自分を名乗り、他人の目を気にしないこと」です。
「もともと営業だったけど、経理に回されたから営業ではなくなる。
会社ってそういうところだよな、と思ったのが36歳のころ。
そのときにデーブ・スペクターさんがいるじゃないですか。
彼はメディアプロデューサーと名乗っているんですね。
あの人が番組を作っているのかわからない、クールギャグしか作ってないじゃないですか(笑)。
だけど、クールギャグが面白いのはコメディアンと名乗ってないからなんです。
プロデューサーなんだけど面白いことを言う、だから面白い。
「そう思ったときに、僕にしかない肩書きである『バラエティプロデューサー』と名乗ろうと決めました。
なぜ人から仕事を植えつけられないといけないんだ。
少なくとも自分の仕事は、自分で決めようって思ったんです。
そうすれば、番組の企画が通らなくても『今はテレビ番組を持っていないプロデューサー』と認識してもらえるから」
談慶師匠が「戦い上手」という言葉をおっしゃっていましたが、言い得て妙だと実感しました。
他の人と戦わないで済むなら、極力戦わない。
PayPal創業者のピーター・ティールも 「他人と『競争』するとは、それに巻き込まれた時点で負けである」という言葉を残しています。
自身の立ち位置を自ら築き上げる。
その第一歩が、「名乗り上げること」ではないでしょうか。
オススメ本
「運がつきまくっている」芸能人や文化人に囲まれ、運に愛された角田さんだから書ける一冊。
「運って何だかスピリチュアルで怪しい」
そう思っている人こそ、オススメしたい一冊です。
運を開く道が、ロジカルに説明されています。
「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 (光文社新書)
- 作者: 小川さやか
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2016/07/14
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イベントにて角田さんがオススメしていた一冊。
Living for Today—その日その日を生きる—先住民とそこにある社会の仕組みを論じることを通じて、私たちの生き方を再考するきっかけを与えてくれます。
お金を返さない文化のある国など、馴染みのない考え方に出会えます。
談慶師匠の最新刊。
時代が変わっていく中でも、何十年、何百年と歴史が続いている落語。
なぜ廃れないかというと、価値があるから。
思わずハッとさせられる名文句に、出会えるはず。
お話を終えて
ここには書けない話も飛び出し、秀逸な比喩を交えたトークに終始圧巻。
また、目の前で談慶師匠の落語を聴くこともできて贅沢な時間でした。
「ふーん」ではなく、「うん!」とうなずくオープンな姿勢が運を引き込むことを、お二方とも体現していました。
ネットでつながりやすい現代だからこそ、リアルな場に集まり空間を共有することに価値があると実感しました。
「最近、運がないな」と思ったとき、自らの言動を省みるとその原因が見えてくるのではないでしょうか。
新R25 編集長が語る企画力の磨き方 渡辺将基さん
それが聞きたかった、と思わず心の中で声がこぼれる。
その企画力は読者を惹きつけ、いま最も注目されているメディアの一つである『新R25』。
本日は、編集長の渡辺将基さんが考える「企画力」の極意を伺いました。
【目次】
プロフィール
渡辺将基 (ワタナベ マサキ)
2012年サイバーエージェント入社。社長室にてコミュニティサービスのUI/UXディレクターを務めたあと、2014年4月にニュース&エンタメメディア「Spotlight」を立ち上げ、編集長に。同メディアを月間訪問者数2300万人を超える規模まで成長させた。2017年9月、メディア・シェイカーズが運営する「R25」とブランド統合する形で若手ビジネスパーソンのためのトレンド解説メディア「新R25」を新創刊し、編集長として従事。
今回、渋谷で開催している朝活コミュニティ「朝渋」にて学んだことを共有します。
引用:【20代限定!】~メディアと語る朝渋~ 新R25 編集長・渡辺将基さん | Peatix
企画で意識をしていること
エッジの立った企画力は、どのような考えから生まれているのでしょうか。
「今の時代どういうものが面白いかというと、人に依存をしていることが大きいと思います。
情報だけを見ても響かなくて、『誰が言っているのか』だが重要視されているのです。
今は情報があふれて選べなくなっているため、その上にある人を選んで信用しようという心理になっているのです。
そこにどういう切り口で話を聞くか。
その掛け合わせである『人×切り口』が企画になります。
だから『この人が面白そう』だけでなく『何の軸で聞くか』がすごく大事」
「あの藤田社長はどんなお金の使い方をしているのか?」と読者の心は惹きつけられる
「たとえば資産運用の楽しい知識を網羅的にまとめて発信しても、なかなか意思決定には至りません。
一方、田端さんが『とりあえずこれをやっておけ!』と言ったらみんなが動き出す。
これは人の信用があるからなんです」
楽しみながら新たな発見のある記事には興味がいくもの
5つの切り口を心がける
面白いものは「人に依存をしている」とはいえ、「切り口」に強さがなくては読者にインパクトを与えることはできません。
渡辺さんは企画を作る際、5つの切り口を考えるといいます。
1.絞る→切り口をタイトにしよう
「例えば『お金の話』を企画するとしましょう。
お金の話で止まるのではなく…
お金の話→お金の使い方→お金が増えるお金の使い方…
と、どんどん狭くしていく。
すると、次第にエッジが立って企画が輝いていきます。
だから『もっと切り口をタイトにできないか』という視点でやってみると面白いと思う」
絞れば絞るほど興味を持つ人が減るのでは、と思うかもしれません。
しかし、渡辺さんはこう語る。
「逆に広いと誰にも刺さらないし届かない。
思いっきり狭めた方がいい。
まずはタイトに設定し、その上で足りなければ広げて取材をするのがいいでしょう」
2.逆張る→世の中の固定概念を見つけよう
「世の中の固定概念に敏感になって、感度として当てていくのは企画としては強い。
ただ、それをあざとくやるのは違うが、この感覚は大事」
「家に住まないってどういうこと?」気がついたらクリックをしていますね
例えば「家に住まない男」という企画。
家に住むことは普通のことだけど、それにカウンターを出せる時点で、タイトルも強くなる。
だから『みんなはこう思っているよな』というところは意識している」
3.ゆさぶる→ゆさぶると本性が顔を出す
「これは新R25っぽいのかなと思う。
同じことを言ってもゆさぶった結果、出てくる言葉にダイナミックさが出てくる。
例を挙げると、堀江さんに多動力についてインタビューをした時」
取材中、堀江さんはイライラしていたそう(汗)。ただ、原稿を渡したところ「面白い」と言葉をもらったとのこと
「『多動力って何がいいんですか?』と普通に聞くことと『多動力って極論じゃないですか?』とゆさぶること。
ゆさぶった結果、多動であることのメリットがカウンターとして返ってきます。
入口としてゆさぶった方が相手の主張が強くなるので、そこを意識して企画をしている」
4.極端にする→思い切って振り切ってみよう
「たとえばサウナが流行っているとしましょう。
サウナの魅力を伝えたいときに『サウナの魅力を誰かに語ってもらう』だけだと普通になる。
それを『この商品を100個買うまで帰れません!』などして極端に振り切ろうということ」
バチバチの対決が繰り広げられています
「企画に対して、『今ある延長線上でもっと極端に振り切れないか?』という感覚を持っている。
堀江さんへの取材で、週刊文春の社員になりきる企画も、勇気を持って極端に切り込んでいこうと思った」
5.ギャップを出す→相手の新鮮な一面を引き出そう
「企画でギャップが出るような、組み合わせを狙って相手の新鮮な一面を引き出すことを意識している。
たとえば、キッズラインで箕輪さんに子育てのお話を聞いたこと」
意外性が心を惹きつける
「彼に子育てに関してを聞くのは、おそらく新鮮でしょう。
『人×切り口』で、『この人にこれを聞いたら新鮮だな』、『何か普段見えない姿が見えそうだな』というのは意識している。
それをあえて狙っていくのは意識が必要なんです」
これで安心してはダメ。見落としがちな企画の落とし穴
『人×切り口』が決まったし、いい企画になるはず。
ただ、そう意気込むのはまだ早い。
企画を実行する前に、問いかけたいことが「本当に仕上がるのか?」。
具体的には以下の通り。
- 取材はOKしてくれるか?
- ストーリーは描けているか?
- 発見や学びのある記事になるか?
- ライターには適性はあるか?
「いい切り口がひらめいたとしましょう。ただ、『本当に仕上がるのか?』ということ。ここが圧倒的に抜けていて、無責任な企画になっていることが多い。
企画会議で盛り上がったとしても、結局、『やりきれるか』がないと、企画ではないと思っている。
実行できてこそ「企画」として成り立つ
たとえば、取材OKにならないということもある。これは自分たちの力量を冷静にわきまえる必要がある。
あるいは、『この企画をやってどういう風になると思う?』と聞くと、意外と答えられず、『あまり面白くなさそうだよね』とボツになることもある。切り口だけになってその先のストーリーが描けてないということです。
そこまで詰めることができないと、企画は仕上がりません。
過去が見切り発車でダメだったことから、今は実現性を見て意思決定をするようにしています」
メンバーの◯◯を高めることが組織のマネジメントにつながる
編集長を務める渡辺さんには、当然部下がいます。
原稿チェックの際は細かくなるものの、組織マネジメントに関しては、細かく口出しをしないといいます。
渡辺さんが見出した、マネジメントのスタイルとは何でしょうか。
「あるタイミングから『新R25』がコンテンツとして上手くいきだしました。
その一番の要因はみんなの目線が上がったこと。ただ、それだけ。
『何かこの企画を出して』ではなく『何かめちゃくちゃ面白い企画を出して』と言ったら、企画のレベルは上がります。
しかし、基本それが組織ではできていません。
大量生産でコンテンツを作っている組織だと、『丁寧で面白いコンテンツを出して大きなインパクトを出してやろう』とはなりません」
クリエイティブは効率の良さから生まれないとのこと
「今まで自分がなかなか上手くいかなかったのは、いわゆる編集長像を持っていたから。椅子にドンと座って『あれをやれ、これをやれ』とメンバーに指示をして、自分は非プレイヤー。ただ、このスタイルでは上手くいきませんでした。
結局、自分のスタイルはプレイヤーとしてコンテンツを作って、『やれるんだ』とみんなの目線を上げる。結果、それがマネジメントになっているのです。
だから、リーダーの一番の役割は、『目線を上げる』ことが一番大事。『そのために何をやるか』をひたすら考えた方がいい」
お話を終えて
『新R25』のクスッと笑える記事を毎回、楽しみにしています。
今まで「面白い」と思えるものの表面上しか見えていなかったとお話を聞いて感じました。
その裏には、読者や取材対象者、ライターなど多くの人を考慮して丁寧に作り込まれている。
そんな作品であると考えると、見方が大きく変わります。
今回、教わった「5つの切り口」は、ビジネスに限らず様々な場面で活かせるのではないでしょうか。
今後も力強い企画力に目が離せません。
暮らして見える世界の価値観! ERIKOさん
こんにちは!
今回紹介する方は、
モデル・定住旅行家のERIKOさんです!
【目次】
プロフィール
ERIKO
モデル・定住旅行家鳥取県米子市出身。東京コレクションでモデルデビュー。 モデル活動と並行し、「定住旅行家」として、世界の様々な地域で現地の人びとの家庭に入り、生活を共にし、その暮らしや生き方を伝えている。 また訪れた国では、民間外交を積極的に行い、現地と日本の架け橋になる活動も行う。 これまで定住旅行した国は、ラテンアメリカ全般(25カ国)、ネパール、フィンランド、ロシア、サハ共和国、北海道利尻島、三重県答志島など。
ドッグショーのハンドラー、自衛隊のパイロットになる夢を抱くものの、諦めて高校へ進学。
しかし、生きがいのない生活からほぼ不登校児に、、、
幾多の壁を乗り越え辿り着いたモデル・定住旅行家という職業。
ERIKOさんの生き方そのものから、学ぶことばかり。
様々な文化や価値観に触れて学んだことを教えていただきました。
ERIKOさんが旅の中で撮影した写真ともにお届けします。
定住旅行家とは
定住旅行家という職業。
聞き馴染みのある人は少ないのではないでしょうか。
そもそも定住旅行家とは何か語っていただきました。
「定住旅行家とは私が作った肩書きなんです。旅を仕事にする人といえば、バックパッカーや文筆家などのイメージだと思います。ただ、私の場合はホテルとかには泊まらずに現地の人の家庭に滞在して、そこに住んでる人たちの暮らしや、生活の様子を体験して多くの人に届けています。
私の目的は普通の旅行とは違います。みなさんは、美味しいものを食べたり、綺麗な景色を見たいという目的で行くと思います。ただ、私の場合はその国の人の生活に入って日常を見るのが目的です。今まで訪問した国は約40カ国とそんなに数は多くありませんが、何回も同じ国に行っているので狭く深く、といった感じです。
私の旅の特徴は宿泊施設には滞在しないことです。基本的にはホームステイという形になります。これまでに74家族と共に生活してきました。都会に住んでいる人から田舎暮らしの人、あとは先住民族の人たちのお家にもお邪魔して居候させてもらっています。電気、ガス、水道がない家もあるし、お手伝いさんが5人とかいたり。どんな家族と滞在するのか、行ってみないと分からない楽しみがあります」
www.youtube.comERIKOさんが見たもの、体験したことはyoutubeにて体感できます。動画の配信は毎週水曜日、必見です!
景色や食べ物ではなく生活に注目する。
普段の生活に置き換えてみても、着眼点を変えることで面白いことが発見できるのでは、と思いました。
自分のやりたいことを仕事として形にする生き方を見習おう。
定住旅行家になろうとしたきっかけ
いきなり「よし、定住旅行家になろう!」とは思わなかったERIKOさん。
どんな理由で志を抱いたのでしょうか。
「1つは人と関わることが好きなんですね。私が思うに人間というのは、自分が出会った人の生き方を見て思ったり感じたりして、いろんなことを選択していく生き物だと思うんです。多分、皆さんも少なからずこの場所にいるというのは、いろんな人たちと出会ったり、お話をしたりして、そこから何か影響を受けて選択をしているからだと思うんですね。
人との出会いはすごく影響力があるものだと思いますし、人の生き方や生活の中にはすごく知恵が詰まっています。そういう学びを求めて、定住旅行をしています」
ホンジュラス Valle de Angeles(天使の谷)©ERIKO
そして、もう1つの理由。
それは強烈な体験が大きく心を動かしたと言います。
「高校を卒業後、鳥取県から東京に出てきてアルバイトをしながらモデルの仕事をしていました。ただ、自分の生き方に悩んでいた時期が4、5年くらいあって『どうやって自分らしく生きていけばいいんだろう』と長く模索していました。また、ストレス性の病気が発症して入院と退院を繰り返していて。
その頃、スペイン語を勉強しようと思って3ヶ月の留学を申し込みました。しかし、支払日になっても必要額に達していなくてスペインに行けなくなったのです。そこで留学会社の担当者が、代わりにオススメしたアルゼンチンに留学することにしました。どんな国なのか全く想像できなかったのですが、行ってみたら『なんなんだこの楽園は!』ってくらい楽しかったんですよ。
あるとき、ブエノス・アイレスのボカ地区というタンゴ発祥の地に遊びに行ったときに、私の人生を変える事件が起こったのです。当時私がアルゼンチンに行った時というのは、バスに乗る際に1ペソというコインを支払わなくてはいけませんでした。ただ、どういうわけか1ペソがマフィアの人にかき集められており、街から1ペソが不足していたのです。ちょうど家に帰るときに、1ペソを払わなきゃいけなかったんですけど、財布の中を見たらなかったのです。
もちろん両替もできないのでどうしようと思って。バスの運転手に料金を多く渡すから乗せてくれと言ってもダメで。だんだん夕暮れになり、あまり治安も良くない地域だったので『これはまずいな』と思っていたら、ひとりの女性がバス停に向かって歩いて来たのです。
アルゼンチン ブエノス・アイレスのボカ地区 ©ERIKO
女性は左手に歩いてる子供さんの手を引いていて、右腕に赤ん坊を抱いていました。身につけている洋服は少々破れていて、そんなに裕福ではないなという印象でした。でも、その人しか周りにいなかったので勇気を持って
『1ペソ持っていますか?』と尋ねました。
ポケットをまさぐって、パッと手を差し出すと、紙くずや他のコインと一緒に1ペソがあったんですね。そしたら、とびきりの笑顔で渡してくれました。『もらっていいのかな』と思いながら、ありがとうございますと受け取りました。代わりに5ペソの紙幣を差し出したんですね。そしたら、いらないって言うんです。
『たぶん、それは、あなたに貰われるためにあった1ペソだから』と。
このとき、私はすごい衝撃を受けました。
自分が東京のバス停で『すみません、10円ありますか?』と言われたら、多分出さないと思うんですよ。『何でこの人は銀行に行かないんだろう』とか考えてしまうと思うんです。
彼女は私よりも貧しい生活をしているかもしれないけれど、与えることにものすごい喜びを感じている。自分の心がものすごい貧しくなってしまっていることに気づいたのです。
当時は仕事をすごくしたかったし、いっぱいお金も欲しかった。
ただ、多分モノをたくさんもらっても、人は幸せを得ることはできないんだって思ったんですね。きっと幸せは、命あるものからしかもらうことができないとその体験で思ったんです。
日本とは違う価値観に出会ったことで、それまで言語にしか興味がなかったことが、人の暮らしや生き方に興味を持つようになりました」
1つの出会いが、その後の人生に大きな影響を与える。
人との出会いの大切さを感じました。
一期一会、一人ひとりとの出会いの大切さを改めて学びました。
旅での決めごと
これまでに何度も世界を旅しているERIKOさん。
必ず守っている決まりごとがあるそうです。
それは、何なのでしょうか。
「旅を友達と一緒に行くと、確かに楽しいと思うんです。ただ、どうしても一緒にいる人と話す時間が長くなってしまうんですね。そうすると、せっかく現地の家族と交流する時間があるのにもったいなくなってしまうので、必ずひとりで行くようにしています。
出会いというのは、本質的にひとりでいることがすごく重要なんじゃないかなって思っています」
サハ共和国 オイミヤコン村(世界一寒い人間居住区)©ERIKO
出会いの本質はひとりでいること。
確かにひとりでいると、行動の範囲が広がりそうです。
自分だけの時間を持つことの大切さを教わりました。
その肩書きって必要?
かつては自身の肩書きに対してコンプレックスがあったというERIKOさん。
しかし、海外に行ってその考え方は変化したと言います。
「私は大学を出ていないので高卒なんです。昔は大学生の肩書きを持ってなかったぶん、すごく劣等感を持ってた時期がありました。ただ、海外では名刺を渡して『こういう大学を出た』と言ってもあんまり通用しないんですね。
それは、人間性そのものを見られるからです。
例えば、会社の社長さんが名刺を出しても、それを見て態度が変わることはほとんどありません。『社長さんだったらそういう人だってことを証明してごらん』って感じで。人間性をすごく見られる環境に多くいるので、今は何とも思っていません」
自分自身、過去に肩書きに対してコンプレックスがあったため、とても共感しました。
今ではとても小さなことを気にしていたなと思います。
人と接する際は、その人そのものを見るように心がけたいものです。
笑顔の価値観
住む環境によって大きく変わる価値観。
キューバを引き合いに出して、笑顔の価値観について話してくれました。
「キューバの生活は工夫や知恵が詰まっています。一般的な給与は月に10ドル、つまり1000円ちょっとです。だから、日本のように物が壊れても買えないんですね。そのため、直し方や縫い方を学ぶしかない。おかげで、すごく知恵を持っているのです。
一番すごい工夫だと思ったのが笑顔です。ある日、ホームステイの家族に食事を出してもらった際、
『日本人は料理を出してもらっても全部でいくらかかっていて、明日また食べられるかっていう不安はないんだよね。私たちは食べるものとか生きていくことがすごく大変で、次の食事が食べられないかもしれないという不安に襲われることもあるの』
と言われたんですよ。そのときに同じ人間でも頭の中は全然考えていることが違うんだってすごい衝撃でした。
ただ、その家族はいつもすごい明るくて元気なんですね。
『じゃあどうして、そんなに辛い生活なのに笑ってられるの?』
と聞いたら、
『辛いから笑うんだ。笑顔というのは何かが起こって笑うものじゃなくて、辛いことしかないから自分たちが笑う。それにすごい価値がある』
と言われたんですね。
その会話から、その国の社会だったり、その国の中で生活する苦悩や生き様が垣間見えた気がしました」
イタリア マッティナータ ©ERIKO
キューバの生活を経験して、日本を改めて俯瞰したときに感じることがあるといいます。
「彼らの生活を良いとか悪いとかは何とも言えませんが、『一生懸命生きている』という感じがすごくするんです。いわゆる『生きがい』ですね。キューバには日本のように、自殺やうつ病はありません。
日本に戻っていつも思うこと。それは、この国には色んなものがあり、何でも手に入り、仕事も選ばなきゃ何でもできること。そういう環境にいると、自分で足りないことを探したり、感動を自分で作ったり、夢を持ったり。そういうことをしないと、メリハリがなくなってしまう。
そのため日本では、生きがいのない人生に陥りやすくなってしまうのかなというのを感じました」
キューバ シエンフエゴス ©ERIKO
日本で笑顔といえば、嬉しいときや恥ずかしいときなど、相手と距離を縮めたいときになるもの。
世界各国の笑顔の裏には、私たちが想像するものとは違う意味を含んでいることもあることを学びました。
海外に行く際、その国の文化をあらかじめ把握していると、吸収できることが増えるのではないでしょうか。
物事を考えるモノサシを増やせることは、海外に出るメリットであると強く感じました。
言語の面白さ
言語習得が趣味というERIKOさん。
今では日本語を含めて6ヶ国語を話せるといいます。
圧巻です…
言語の魅力とは何かを語ってもらいました。
「勉強するとそれを理解できるキャパが人間にはあるんだ、ということに気付かされるんですね。共感できる部分がすでに自分の中に備わるというのがすごいことだと思っています。全然違う価値観でも、それを理解できるようになることはすごく面白いと思います。
私が言語を大切にしている理由は2つあります。
1つはその国の言葉でその国を理解すること、つまりそこに住んでいる人と同じ目線に立ってその国のことを理解することです。もう1つは日本人としての目線。その2つの視点を持つことによって、初めて物事を理解できる入り口に立てると思っています。それが片方だけだと、バランスが悪いんじゃないかなっと思っています」
コロンビア カルタヘナ ©ERIKO
また、日本人にはありがちな、外国語に対する考え方があるといいます。
「いま日本で生活していると外国語=英語という認識が一般的だと思います。確かに国際的に使われる言語としては、すごく有効で便利だと思います。ただ、英語いっしょくたになってしまうと多様性が欠けていくような気がするんですね。
言語というのは、その民族のアイデンティティを表す大切なものなので、世界の多様性を理解するには英語という手段だけでは届かない部分があると思っています。
興味ある言語とか、聞いて素敵だなと思う言語に取り組んでみると、思いがけない出会いや運が開けるような気がします。もし英語が苦手だけど、別の言語がやりたいという人がいたら、ぜひチャレンジしてもらいたいです」
思えば、英語以外の言語が世界中にあります。
「もしかしたら自分にぴったりな言語が見つかるかもしれない」と思うと海外に対する興味がより湧いてくるのではないでしょうか。
オススメ本
今回紹介したアルゼンチンでの経験をきっかけに、1年4ヶ月に渡って中南米・カリブ単独縦断を決行。
その長い物語がこの一冊に綴られています。
様々な人との出会いから、生き方について考えさせられる場面が多々ありました。
また、美しい景色に「実際、その景色を体感したらどうなのだろうか」と想像を膨らませてくれます。
現地に行ったからこそ見える各国の素晴らしい点、改善すべき点が描かれており、とても勉強になりました。
読み終えたあと、「今すぐ旅に出たい!」と思わせてくれる一冊です。
お話を終えて
お話の最後に「旅を通して一番変わったことは何ですか?」と質問すると「受容できるスペースが増えた」という答えをいただきました。
物事を眺めるモノサシを多く持っていれば、それだけ色々な角度から考えることができる。
同じ景色を見たときに、一体どんな風に映っているのか……
ERIKOさんの目から一度世界を眺めてみたいものです。
様々な人との出会いの中で、自分の中にある価値観を少しずつ広げていきたいと思います。
貴重なお話をありがとうございました!
本日も読んでくださりありがとうございます。
「論理的」に見える受け答えの技術! 鈴木鋭智さん
こんにちは!
今回紹介する方は、
企業研修・ビジネスセミナー講師である鈴木鋭智さんです。
【目次】
プロフィール
鈴木鋭智(すずき えいち)
株式会社キャリア・サポート・セミナー顧問講師
ビジネス書・受験参考書著者「MECEもロジックツリーも使わないロジカルシンキング&ロジカルライティング」を得意とする企業研修・ビジネスセミナー講師。
著書『何を書けばいいかわからない人のための 小論文のオキテ55』は2011年の発売以来6年連続Amazonカテゴリ1位、シリーズ累計13万部のベストセラーとして知られる。
代々木ゼミナール講師時代、小論文を「文章表現ではなく問題解決の科目」と再定義することによって合格率を倍増。浪人生のゴチャゴチャになった頭を整理するツールとして「ミニマルシンキング(論点を最小限に絞る思考法)」を開発し、NHK Eテレ「テストの花道」はじめテレビ・雑誌などでも活躍。
またビジネス書『ミニマル思考 世界一単純な問題解決のルール』、『仕事に必要なのは「話し方」より「答え方」』はアジア諸国でも翻訳出版される。
普段は企業の人材育成をされている鈴木さん。
主に20代の仕事に行き詰まってる人や、就活に行き詰まってる人にサバイバルと下剋上の仕方を教えているといいます。
具体的には、「ロジカルな話し方、書き方、議論の仕方」を指導しているとのこと。
今ある状況から逆転をしたい方、要チェックです。
国語には2つのジャンルがある
小学校、中学校、高校と国語の科目があったと思います。
そんな国語には教養とロジックの2つのジャンルがあるといいます。
それぞれどういった意味なのでしょうか。
教養とは、美しい日本語の表現、正しい敬語の使い方、漢字の知識、文学の鑑賞……など。
いわゆる知識系の勉強を意味します。
一方、ロジックとは誤解させないための説明の仕方、的を射た受け答えの仕方を意味します。
文部科学省の学習指導量をくまなく探すと見つかるジャンル。
そのため、現場の国語の先生も気づいてない人がほとんど。
結果、教えられる内容のほとんどが教養に偏ってしまっている状況というのです。
ただ、社会に出てから必要なことはロジックだといいます。
「社会に出て必要なことはロジック。なぜなら、美しい日本語の表現、正しい敬語の使い方、漢字の知識は今の時代検索すれば出てくるからです。
ところが、誤解させないための説明の仕方、的を射た受け答えの仕方は、知識ではないためググってもわかりません。しかも教養にあたる部分は、日本国内だけのローカルルールです。これからの時代、取引先やお客さん、上司、部下が外国人になります。日本国内だけにしか通用しない教養に詳しくなっても活躍できる場は年々狭まってしまうのです。それに対してロジックは世界共通です」
教養とロジックの違いがわかったと思います。
例を挙げて説明を続けます。
「現地法人のアメリカ人の社長に誘われるわけです。
『へい!今度の週末、うちでバーベキューをやるんだけど君も来ないか?』
これが日本の場合、
『ホームパーティーですか!素晴らしい!奥様は料理が上手だし……あ、すみません!あいにく当日、息子の運動会と重なってまして……』
日本のサラリーマンはこれで話が済みます。
参加しないのだな、と。
ところがアメリカで同じことを言ったら、
『So. Do you come or not?』
つまり、息子の運動会があるから参加できませんなのか、息子の運動会があるけどそれを犠牲にして参加するのか、どちらか聞かれます。まずは結論を言おうぜ、と。
このように相手の求める受け答えをできるかがこれから活躍できる人間を分けるカギになるのです」
誤解させないための説明の仕方、的を射た受け答えができるようになれば、英語や中国語ができなくても優秀なスタッフが通訳をしてくれるようになるといいます。
「英語をしないと」と思いがちですが、その前に基礎的な物事の考え方が成り立っていなくては、どこに行っても活躍できません。
見落としていた大切な点に気づかせてくれました。
疑問形にある2つの意味
普段の会話で何気なく使っている疑問形。
そんな疑問系の用法には2つの種類があるといいます。
①質問(説明が欲しい)
②反語(否定を意味する)
「君、この仕事に向いてないんじゃないの?」
たとえば就活の面接で質問されたとしましょう。
ここでのポイントは最初から反語で受け取らないこと。
採用担当者は「できます」「大丈夫」と言って欲しい。
しかしながら、これを否定を意味する反語と捉えてしまい「人格を否定された」と感じてしまう(場合によっては圧迫面接とも受け取ってしまう)。
そのため、話がややこしくなってしまうといいます。
考えてみれば、これから我が社に入る可能性のある学生に対して恨みを買いたくないでしょう…
相手は、説明が欲しいのか否定したいのか、見極められるかが大切だといいます。
この知識があれば「就活の面接のストレスは半分に減るでしょう」というメッセージをいただきました。
ぜひ、頭の片隅に留めておきましょう。
「意見」を求められたら?
「君、何か意見はあるか?」
新入社員になれば、上司から尋ねられることがあるでしょう。
それに対して何も答えられず固まってしまうこともあると思います。
ではそもそも、意見とは何でしょうか。
鈴木さん曰く、意見と言えるものと言えないものの区別は「それに対して賛成・反対が言えるかどうか」にある。
そして、意見とは「提案すること」だといいます。
たとえば「昨日から強い雨が降っている」。
これに対して賛成・反対は言えません。
このような事実の説明や感想は意見に含まれません。
「昨日から強い雨が降っている。だから遠足を中止にしよう」。
これに対しては「残念だけど中止にしよう」や「いやいや、雨の中でも決行するのが遠足でしょ!」と賛成・反対が言える意見になっています。
では、なぜ意見が求められるのか。
新入社員に求められているのは答えではありません。
それは、話を転がすきっかけが求められているからだというのです。
「意見が言えない人は、いてもいなくてもいい存在」という言葉が強く印象に残りました。
不器用でも自分の意見を発信していきます。
世界一単純な問題解決のルール
皆さんも周りを見渡すと、様々な問題にあふれているのではないでしょうか。
そんな問題を解決するための3つのルールを教えていただきました。
1 実害のないことで騒がない
「不快感」「不謹慎」「面倒くさい」「非常識」「不公平」…
こうした気分や思い込みといったことで騒がないことが大切だといいます。
具体例として「芸能人の不倫が許せない」ことが挙げられます。
実際、テレビを見ている人は何も被害を被ってないでしょう。
つまり、「別にいいじゃないか」と思えることがポイントだといいます。
一方、実害のあることとは「命かお金」に関わること。
「健康被害」「お店の売り上げ」など。
これは誰も否定できないでしょう。
問題を提起をする際、「実害のあること」と「実害のないこと」を分けることから始める大切さを学びました。
2 心がけではなく仕組みを変える
変えることが難しいことの1つに「人の心」があります。
人の心を改善しようと力を入れるより、仕組みを変えた方が問題解決につながりやすいといいます。
抱えている問題は「アルバイト従業員が不適切な写真をSNSに投稿する問題を防ぎたい」とします。
この問題をどうすれば解決できるでしょうか。
鈴木さん曰く「採用の申し込みを往復はがきに限定する」ことによって効果が出るといいます。
今の時代に往復はがきをわざわざ出してくれる人はSNSをあまりやらない人がおそらく多い。
心に焦点を当てた「情報リテラシーを教える」ことよりも効果がありそうです。
最初からやる気のある人を集めるという発想の転換に感心しました。
3 禁止令、罰則よりもクールな手はないか
手取り早い解決策として「禁止令、罰則」をついつい考えがち。
ただ、そこで「クールな手」、つまり「より効果が大きく、より効果が確実で、よりコストが少なく済む解決策」を探すことが大切だといいます。
丘の上にある高校では、下校時に坂道を猛スピードで駆け下りる生徒がいて問題です。
坂の終わりは大きな道に面しており、自動車と衝突する事故が多発しています。
この問題の解決策は、どちらがクールでしょうか。
1.自転車で坂を駆け下りたら停学処分
2.自転車置き場を坂の下に作る
2の方が断然クールですね。
最初に思いついた考えがベストだとは思わずに、「もっといい答えはないか」と考える習慣の重要性を教わりました。
オススメ本
コミュニケーションについて書かれた本といえば「話し方」について書かれたものが多い印象。
しかし、本書は「答え方」にフォーカスをしており一線を画している印象を受けました。
これまでの「答え方」を振り返ると、質問の意図を正しく理解して答えられなかったことを痛感しました。
コミュニケーションに興味のある方にオススメです。
仕事や人生のごちゃごちゃした問題をサクッと解決したい。
そんな方にオススメの一冊。
本書でいう「ミニマル思考」とは、頭の中から無駄を削ぎ落とし、残った最小限の「考えるべきことに集中する思考を意味します。
今回のブログで紹介した問題解決のルールについてもより詳しく説明されています。
180ページ弱とコンパクトな中にポイントがギュッと詰まっています。
これから将来を考える上で、公務員を目指す方もいるでしょう。
そこで避けられないのが公務員試験。
CSS公務員セミナーの講師でもある鈴木さんから、試験を突破するためのヒントが得られます。
武器を持って試験に立ち向かうか否かでは心の持ちようも変わってくるでしょう。
頭の中のモヤモヤをスッキリさせて、合格へ向かって一直線に進んでいきましょう。
お話を終えて
これまでを振り返ると頭の中がごちゃごちゃになっていたな、と痛感しました。
相手は何を求めているものは何か。
他者への想像力の重要性を感じました。
相手の求めるものを届けるということは、普段の生活から仕事まで、どんな場面でも大切になってくる要素ではないでしょうか。
コミュニケーションの本質を学ぶことができたと思います。
また、問題解決のための新しい発想を教わることができました。
頭の中の「ムダ」を削り、本当に大切なことだけに注力していきます。
鈴木さんありがとうございました。
本日も読んでくださりありがとうございます。