新R25 編集長が語る企画力の磨き方 渡辺将基さん
それが聞きたかった、と思わず心の中で声がこぼれる。
その企画力は読者を惹きつけ、いま最も注目されているメディアの一つである『新R25』。
本日は、編集長の渡辺将基さんが考える「企画力」の極意を伺いました。
【目次】
プロフィール
渡辺将基 (ワタナベ マサキ)
2012年サイバーエージェント入社。社長室にてコミュニティサービスのUI/UXディレクターを務めたあと、2014年4月にニュース&エンタメメディア「Spotlight」を立ち上げ、編集長に。同メディアを月間訪問者数2300万人を超える規模まで成長させた。2017年9月、メディア・シェイカーズが運営する「R25」とブランド統合する形で若手ビジネスパーソンのためのトレンド解説メディア「新R25」を新創刊し、編集長として従事。
今回、渋谷で開催している朝活コミュニティ「朝渋」にて学んだことを共有します。
引用:【20代限定!】~メディアと語る朝渋~ 新R25 編集長・渡辺将基さん | Peatix
企画で意識をしていること
エッジの立った企画力は、どのような考えから生まれているのでしょうか。
「今の時代どういうものが面白いかというと、人に依存をしていることが大きいと思います。
情報だけを見ても響かなくて、『誰が言っているのか』だが重要視されているのです。
今は情報があふれて選べなくなっているため、その上にある人を選んで信用しようという心理になっているのです。
そこにどういう切り口で話を聞くか。
その掛け合わせである『人×切り口』が企画になります。
だから『この人が面白そう』だけでなく『何の軸で聞くか』がすごく大事」
「あの藤田社長はどんなお金の使い方をしているのか?」と読者の心は惹きつけられる
「たとえば資産運用の楽しい知識を網羅的にまとめて発信しても、なかなか意思決定には至りません。
一方、田端さんが『とりあえずこれをやっておけ!』と言ったらみんなが動き出す。
これは人の信用があるからなんです」
楽しみながら新たな発見のある記事には興味がいくもの
5つの切り口を心がける
面白いものは「人に依存をしている」とはいえ、「切り口」に強さがなくては読者にインパクトを与えることはできません。
渡辺さんは企画を作る際、5つの切り口を考えるといいます。
1.絞る→切り口をタイトにしよう
「例えば『お金の話』を企画するとしましょう。
お金の話で止まるのではなく…
お金の話→お金の使い方→お金が増えるお金の使い方…
と、どんどん狭くしていく。
すると、次第にエッジが立って企画が輝いていきます。
だから『もっと切り口をタイトにできないか』という視点でやってみると面白いと思う」
絞れば絞るほど興味を持つ人が減るのでは、と思うかもしれません。
しかし、渡辺さんはこう語る。
「逆に広いと誰にも刺さらないし届かない。
思いっきり狭めた方がいい。
まずはタイトに設定し、その上で足りなければ広げて取材をするのがいいでしょう」
2.逆張る→世の中の固定概念を見つけよう
「世の中の固定概念に敏感になって、感度として当てていくのは企画としては強い。
ただ、それをあざとくやるのは違うが、この感覚は大事」
「家に住まないってどういうこと?」気がついたらクリックをしていますね
例えば「家に住まない男」という企画。
家に住むことは普通のことだけど、それにカウンターを出せる時点で、タイトルも強くなる。
だから『みんなはこう思っているよな』というところは意識している」
3.ゆさぶる→ゆさぶると本性が顔を出す
「これは新R25っぽいのかなと思う。
同じことを言ってもゆさぶった結果、出てくる言葉にダイナミックさが出てくる。
例を挙げると、堀江さんに多動力についてインタビューをした時」
取材中、堀江さんはイライラしていたそう(汗)。ただ、原稿を渡したところ「面白い」と言葉をもらったとのこと
「『多動力って何がいいんですか?』と普通に聞くことと『多動力って極論じゃないですか?』とゆさぶること。
ゆさぶった結果、多動であることのメリットがカウンターとして返ってきます。
入口としてゆさぶった方が相手の主張が強くなるので、そこを意識して企画をしている」
4.極端にする→思い切って振り切ってみよう
「たとえばサウナが流行っているとしましょう。
サウナの魅力を伝えたいときに『サウナの魅力を誰かに語ってもらう』だけだと普通になる。
それを『この商品を100個買うまで帰れません!』などして極端に振り切ろうということ」
バチバチの対決が繰り広げられています
「企画に対して、『今ある延長線上でもっと極端に振り切れないか?』という感覚を持っている。
堀江さんへの取材で、週刊文春の社員になりきる企画も、勇気を持って極端に切り込んでいこうと思った」
5.ギャップを出す→相手の新鮮な一面を引き出そう
「企画でギャップが出るような、組み合わせを狙って相手の新鮮な一面を引き出すことを意識している。
たとえば、キッズラインで箕輪さんに子育てのお話を聞いたこと」
意外性が心を惹きつける
「彼に子育てに関してを聞くのは、おそらく新鮮でしょう。
『人×切り口』で、『この人にこれを聞いたら新鮮だな』、『何か普段見えない姿が見えそうだな』というのは意識している。
それをあえて狙っていくのは意識が必要なんです」
これで安心してはダメ。見落としがちな企画の落とし穴
『人×切り口』が決まったし、いい企画になるはず。
ただ、そう意気込むのはまだ早い。
企画を実行する前に、問いかけたいことが「本当に仕上がるのか?」。
具体的には以下の通り。
- 取材はOKしてくれるか?
- ストーリーは描けているか?
- 発見や学びのある記事になるか?
- ライターには適性はあるか?
「いい切り口がひらめいたとしましょう。ただ、『本当に仕上がるのか?』ということ。ここが圧倒的に抜けていて、無責任な企画になっていることが多い。
企画会議で盛り上がったとしても、結局、『やりきれるか』がないと、企画ではないと思っている。
実行できてこそ「企画」として成り立つ
たとえば、取材OKにならないということもある。これは自分たちの力量を冷静にわきまえる必要がある。
あるいは、『この企画をやってどういう風になると思う?』と聞くと、意外と答えられず、『あまり面白くなさそうだよね』とボツになることもある。切り口だけになってその先のストーリーが描けてないということです。
そこまで詰めることができないと、企画は仕上がりません。
過去が見切り発車でダメだったことから、今は実現性を見て意思決定をするようにしています」
メンバーの◯◯を高めることが組織のマネジメントにつながる
編集長を務める渡辺さんには、当然部下がいます。
原稿チェックの際は細かくなるものの、組織マネジメントに関しては、細かく口出しをしないといいます。
渡辺さんが見出した、マネジメントのスタイルとは何でしょうか。
「あるタイミングから『新R25』がコンテンツとして上手くいきだしました。
その一番の要因はみんなの目線が上がったこと。ただ、それだけ。
『何かこの企画を出して』ではなく『何かめちゃくちゃ面白い企画を出して』と言ったら、企画のレベルは上がります。
しかし、基本それが組織ではできていません。
大量生産でコンテンツを作っている組織だと、『丁寧で面白いコンテンツを出して大きなインパクトを出してやろう』とはなりません」
クリエイティブは効率の良さから生まれないとのこと
「今まで自分がなかなか上手くいかなかったのは、いわゆる編集長像を持っていたから。椅子にドンと座って『あれをやれ、これをやれ』とメンバーに指示をして、自分は非プレイヤー。ただ、このスタイルでは上手くいきませんでした。
結局、自分のスタイルはプレイヤーとしてコンテンツを作って、『やれるんだ』とみんなの目線を上げる。結果、それがマネジメントになっているのです。
だから、リーダーの一番の役割は、『目線を上げる』ことが一番大事。『そのために何をやるか』をひたすら考えた方がいい」
お話を終えて
『新R25』のクスッと笑える記事を毎回、楽しみにしています。
今まで「面白い」と思えるものの表面上しか見えていなかったとお話を聞いて感じました。
その裏には、読者や取材対象者、ライターなど多くの人を考慮して丁寧に作り込まれている。
そんな作品であると考えると、見方が大きく変わります。
今回、教わった「5つの切り口」は、ビジネスに限らず様々な場面で活かせるのではないでしょうか。
今後も力強い企画力に目が離せません。