出逢いの教室

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日本で一番予約がとれない焼肉店の秘密とは 森田隼人さん

焼肉屋をイメージしてください」と言われて、どんなお店を想像するでしょうか。ゆったりと椅子に座ってお肉を囲む、そんな景色を思い浮かべた方が多いのでは。

 

今回、紹介する森田隼人さんが立ち上げた焼肉店「六花界」は「激セマ」と言われるほどの空間。その狭さはたったの2.2坪、そして特徴的なのが立飲み焼肉店であること。

 

どのようにして、この狭いお店を成功に導いたのか。

 

森田さんの思考に迫ります。

 

プロフィール

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引用:六花界グループ 採用ホームページ [採用・求人情報]

森田 隼人(もりた はやと)

1978年生大阪府生まれ。

大学卒業後、建築会社を経て25歳で独立。デザイン事務所「m-crome」を設立。その後公務員を経て、2009年に東京・神田のガード下に「六花界」をオープン。

多くのメディアに取り上げられ「肉と日本酒」の文化を構築する。

その後、2012年に「初花一家」2013年に「吟花」2015年に「五色桜」2016年に「CROSSOM MORITA」2018年に「トライリウム」など計7店舗をオープン。

日本酒の活動での功績が認められて、「第12代酒サムライ」にも叙任され、日本に限らず世界各地で肉と日本酒の普及活動も行なっている。また、シェフだけではなくプロボクサーやモデルの一面も。

国家資格である一級建築士なども持つ異例のシェフ。

芸能界との繋がりも深く、各メディアから注目を受けている。

 

なぜ六花界を作ったのか

 

「僕はいまシェフという仕事をしていて、『肉×日本酒』のお店を経営しています。

 

文化を辿ればわかりますが、日本ではもともと牛を食べませんでした。60年前はまだ、日本に焼肉がなかったので、肉に合わせる日本酒はなかったのです。1200年の歴史のある日本酒は、魚介や山菜と合わせて食べていました。『肉×日本酒』そういったお店は今まで世界になかったので、僕たちが新しい形をつくりました。

 

僕の一番の仕事は何かと言うと一級建築士。国家資格を4つに加えて、それに付随する資格はいくつも持っています。これら資格は全て26歳までにとりました。今は設計事務所とリサイクルの仕事、そして飲食店7店舗経営しています。付け加えると、プロボクサーやユニクロのモデルもしています。色々と詰め込んでおくと人間は、まず拒絶反応を起こす。そんな経験は慣れているので、皆さんの反応は気にしません(笑)。

 

25歳で建築士として独立しましたが、何も仕事がないところからのスタートでした。 それから徐々にインテリアデザイナーとしての仕事を得ていましたが、不景気に伴い仕事もお金もなくなりました。そんな時、宮田ジム・スポーツクラブの宮田博行会長が迎えてくれました。

 

夕食でファミリーレストランに連れて行ってくれると、食べきれないくらいの大量の注文をし、残った分は持ち帰らせてもらいました。わざと大量の注文をし、朝食と夕食も賄えるようにしてくれたのです。毎日、飯を食えるようになるまでずっとそれを続けてくれました。

 

立ち飲み焼肉店「六花界」の雰囲気が伝わってきます

 

『会長に恩返しをしないといけない』。そう思いなけなしのお金で作ったのが、六花界という焼肉屋だったのです。ボクサーが相手を倒そうと思ったら、野菜や魚ではなく「肉を食べよう!」と思うでしょう。ただ、ボクサーにはお金がないから価格を安く抑えられる、立ち食いの焼き肉店を作りました。

 

四畳半の大きさで、そこに厨房もトイレもあります。簡単に言うと乗用車1台に20人以上が入る、そんな店を作りました。周りからは『そんなの売れるわけがない』『焼肉は座って食べたい』と。ただ、そんなことはわかっている。ターゲット考えてみて、一人が美味しい、楽しいと言ってくれたらマーケティング的には勝ちなんです

 

日々大切にしている習慣

 

「普段大切にしていることは、大きく3つあります。

 

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まず1つは体を鍛えること。海外の方々は日本人に比べて、自分のビジュアルを大切にしています。例をあげると隣の韓国では、 男性はとても鍛えていて女性は整形をしています。それがいいとは言いません。ただ、『人は見た目が九割』という本が売れるくらいだから、ビジュアルがいいに越したことはありません。

 

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2つ目は、日記をつけることで20年以上続けています。『日記をつけろ』とは言いません。ただ一週間一ヶ月と続けてみると、色々とわかることがあります。日記の際に毎日点数をつけて、一ヶ月ごとに折れ線グラフにしています。すると、人生の波がわかるようになって『一か月後はこうなりそうだな』『ここら辺でテンションが下がりそうだな』と予測できるようになります。

 

仮に10年続けたとして『今日はご飯食べた』『しっかり寝れた』そういった日記を見返して、『自分には表現力全然ないな』と気づくだけでもいい。『自分にはこんな能力があるんだな』『こんな能力が足りないんだな』と知ることが、自分自身をマーケティングする上で大切になります。

 

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3つ目は自分への投資。先日フランスから帰ってきた21歳の子と話しました。彼は食べるのが好きすぎて、一食に5万円をかけています。自分も当時、食事にかけられる金額は3000円ぐらいだったから、食にそんなに興味を持つ必要はありません。ただ、もし食事に興味を持っていたら、どんどんお金を使うべき。食べないとわからないことがたくさんあります。

 

結局人は、話を聞いているだけでは他人事に終わってしまいます。自分事にするのはとても大切なので自分に投資をしましょう。自分に投資をしていると、何にお金を払うべきかが次第に見えてくるのです

 

ニーズを作ること

 

「飲食店で立ち食いにはニーズがありませんでした。ニーズが無いなら作ることが大切。

 

例えば、女性でフェラーリはあんまり興味を持たないでしょう。一方男性はシャネルに対して興味をあまり持たないでしょう。この間を埋める作業が経営なんです。

 

lifemagazine.yahoo.co.jp六花界グループの頂点に君臨する「クロッサムモリタ」の仕掛けの多さに驚くこと間違いなし

 

例えば、男性に対して『シャネルが出しているビールを飲みたいか』と言われると、『ちょっと美味しいんじゃないかな』と興味を持つのではないでしょうか。そういう風に、間を埋めて自分事に置き換えていくことが経営ですごく大切なことなんです」

 

仕事と経営の違い

 

「経営というのは、立案して構築して発展させていって拡張させて目標を到達して発散させていく。最終的に、多くの人に広げていくのです。経営というのは言われたことをやらないことなんです。それに対して仕事というのは言われたことをやることです。

 

「なぜ大学に行くのか」を聞かれたら、仕事ができる人間になるため。僕は建築関係だったから、たくさん建築のことについて学びました。ただそれは結局、言われたことをやれるようになるためだったのです。

 

森田さんの辿ってきた軌跡が綴られた一冊。多くの人に価値を届け続ける経営者の視点が勉強になりました

 

みんなが考えてこなかったマインドとロジックを使って、構築し、人の概念をずらしていくこと。つまり言われたことをやっている仕事自体を少し崩していくことが経営なのです。

 

そして経営者は『人の可能性を広げた人』と言い換えることができます。だから優れた経営者というのは、何かを作った人ではありません。例えばトヨタ。彼らは自動車を作ったのではありません。自動車を作ることによって人の可能性を広げたのです」

 

世界最小の経営

 

「世界最小の経営は何か。それは自分自身です。自分自身がやりたいことをするためには、どうすればいいのかをまず考える必要があります。

 

その経営を一番最初に変えるきっかけが言葉だと思います。人にものを伝えるというのは、すごく大切。

 

例えばコピーライティング。『そうだ京都、行こう。』でどれだけの人が京都へ行こうと思っただろうか。言葉ひとつでインパクトを作り出して、みんなの行動を群衆に集めることができるのです。

 

引用:年代から見る|「そうだ 京都、行こう。」ポスターギャラリー|そうだ 京都、行こう。

 

今は女性一人で牛丼家に入る人を見かけるのではないでしょうか。ただ、少し前まではそんなことはありませんでした。それはなぜかと言うと、『おひとりさま』という言葉ができたから。『おひとりさま』という言葉ができて『いいんだ、一人で行っても』と考えるようになったのです。あるいは『プレミアムフライデー』という言葉によって、『なんだかよくわからないけど、金曜日が楽しそう』と考えるようになりました。

 

先ほど伝えたビジュアルを良くするということは『いい店を構えること』と考えてください。汚い店ではなく綺麗な店に入ろうと思わないでしょう。そして、そのお店から出てくる料理というのが『言葉』なんです」

 

言葉をつくる3つのポイント

 

「言葉を作る時に、人を惹きつけることは3つあります。テクノロジーエデュケーション、エクスペリエンスです。

 

みんなiPhoneiPadなど新しいテクノロジーに興味があるんです。調べると世間がどういうことに興味があるのかわかってくるので、まず調べることから始めましょう。

 

エデュケーションは日本人が一番得意なことです。「あんなこともあるんだ」「こんなこともあるんだ」と、とにかく知識を貯めて覚えることがとても大切です。

 

エクスペリエンスとは経験のこと。人はいろんなことを経験したいと思うので、自分の経験した話を人に話すことが大事です。

 

nipponmkt.net

多くの人から愛され続ける秘訣はどんなところにあるのか

 

ただ最近思うのは、2つめのエディケーションだけでは眠くなってしまう。だから、エデュケーションにエンターテイメントを足した『エデュテイメント』をしようと考えています。

 

テクノロジーエデュテイメント、エクスペリエンス。この3つを考えて言葉にすると、相手にとって嬉しい話になるのです。

 

例えば牛を一つとっても、何ヶ月で出産されて、何ヶ月で屠畜されるか知らないでしょう。色んなことを分解してみると、知らなくて面白いことがたくさんある。それを知っておくと技術になることがあるのです。まずは知識を入れてそれらを面白いストーリーにのせて言葉にすると、人は話を聞いてくれます。知識が自分にとって役立つかを想像させることが大事なのです」

 

商売を通して大切にしていること

 

「商売をしていること全部において言えることは、仲間を大切にしていること。

 

サービスは不特定多数にできないと思っています。特定少数にこそできると思っているのです。美味しいものを作って『はい、食べてください』というのは、ある意味強制的だと思う。

 

ただ、僕が経営するお店は必ず知っている人が来店するから、『5年前に何を食べたか』や『好き嫌い』まで全部データベースとして頭の中に残っている。この人が喜ぶことを提供すること。それこそ、サービスだと思っています」

 

焼肉店を通して届けたいもの

 

焼肉店を通して届けたい価値は命です。

 

牛が生まれるまでの日数は300日、一方の人間は十月十日(とつきとおか)。人間と牛の出産は10日しか違うのです。牛をどうして食べてなかったかというと、ずっと一緒に生きてきたから。今で言うと、犬を食べるのと一緒だったのです。

 

全ての食べ物には設計図が残されています。米はもともとあんな形ではなかっただろうし、トウモロコシももっと小さかったはず。1000年前に震災や災害がたくさん起こって、人間が子供たちに美味しいものを食べさせてあげたい、その形を残しているのが食材の設計図。その設計図をどういう形で僕たちが調理するのか。それがとても大切なことだと思っています。

 


 森田さんが語る「シェフの設計図」とはいかに

 

もともと牛は1という量の乳を作っていましたが、この30年で品種改良されていまは2.5倍の乳が出るようになっている。その品種改良は人間が残した設計図ですが、図面は残せません。だから形として残したものが食材だと思うのです。

 

焼肉に関してもそうですが、色々なものには部位がある。どうしてあの形になっているのか、と。そういったことをしっかり伝えるのが大切だと思っています」

 

お話を終えて

 

お話を聞いた後日、立ち飲み焼肉屋「六花界」を訪れることができました。想像以上の狭さに驚かされたことを覚えています。ただ、この狭さが人と人の距離をぐっと引き寄せ「この場所にまた来たい」と心から思えるのでしょう。「六花界」がオープンしてから8年、多くの人に長く愛され続ける理由を体感することができました。

 

インターネットが流行し、気軽にコミュニケーションが取れるようになった昨今。リアルな場だからこそ得られる、温かさがここにはあります。

 

気になった方は、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

 

retty.me

 

sake.hatenadiary.com